「転職の思考法」×「いつ転」(比較読書)
問題意識
労働市場というマーケットにおいて、自分の価値が下がっているのではないか。
そのような漠然とした危機感を抱いていた。特に転職をするつもりもなかったのだが、ふと目に止まった転職本は、こうした悩みに応え得るものであった。
比較対象
今回の比較対象は以下の2冊
『転職の思考法』(以下「思考法」)
このまま今の会社にいていいのか?と一度でも思ったら読む 転職の思考法
- 作者: 北野唯我
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2018/06/21
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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『「いつでも転職できる」を武器にする』(以下「いつ転」)
「いつでも転職できる」を武器にする 市場価値に左右されない「自分軸」の作り方
- 作者: 松本利明
- 出版社/メーカー: KADOKAWA
- 発売日: 2019/04/27
- メディア: 単行本
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比較の概要
両書とも、転職力を身に着けることで自由を得よう、というスタンスだ。ただし転職力の内容に微妙な差異があるように感じた。
以下、共通する部分を簡単にまとめつつ、細かな違いについて検討し、結局のところ何をどうすればいいのかを考えてみたい。
- 転職力のフレーム
- ポジションか、持ち味か。
- 持ち味を自覚し、経験を積む。
転職力のフレーム
両書を読むと、転職力とは、以下の2点に集約できるか。
- 自分の資質を活かし、一貫することで個性を獲得する。
- 自分のマーケットバリューを高めるようポジショニングする。
両書に共通するのは「専門性」への疑問だ。
「思考法」によればセンスの有無に左右されるし、「いつ転」によれば陳腐化が速い。
そこで、普遍的・汎用的なポータブルスキルの習得のほか、自分の資質に合わせることと、経験を積んで自らの価値を高めるようなポジショニングを重視することになる。
資質か、ポジショニングか
各書は、どちらをより重視するか、優先度が異なるように感じた。
「思考法」は、ポジショニング重視だ。業界の生産性を重視し、伸びるマーケットを見付ける。その中で、自らの個性(「ラベル」)を強固にできる仕事を選ぶ。
「いつ転」は、持ち味重視だ。自分にあった資質を組み合わせて個性を出し、一貫性を持たせて説得力をつける。他方、「業界・企業・職種×フェーズ」についても、自分の持ち味に合ったものを選ぶ。その際、資質を活かして活躍できるのであれば、ライバルとの競争を避ける「逆張り」もアリだ。
個人的には「いつ転」の方に説得力、というよりはそうあってほしいという希望を感じた。後始末が得意なのであれば、成長フェーズよりも衰退フェーズで活躍できそうである。スキルの金銭化を重視するのか、または活躍そのものを重視するのか、といった違いだろうか。
資質を自覚し、経験を積む
両書を比較すると、少なくとも次の2点が重要であるとわかる。
- 資質を自覚すること。
- 一貫性を意識しながら自分を高めるポジショニングをすること。
資質の自覚
優先度の差はあれ、自らの「個性」とするため、資質を自覚する必要がある。この方法は各書が方法を提案してくれている。
「いつ転」によれば無二の才能は必要なく、他人から「ありがとう」と言われる持ち味を2,3個も組合せれば十分「個性」となる。
「思考法」によれば「苦にならないこと」という程度で構わない。
これらは、才能だとか個性だとかが見つからず悩まされてきた自分にとって、非常にありがたい示唆となった。
戦略的なポジショニング
業界の生産性と、自分の資質との適合性どちらを優先するか。これは簡単には結論付けられないところではあるが、両社とも共通するのは、楽をしてはいけないということだ。
「思考法」によれば、適度な緊張と緩和がなければ成長はなく、ゆでガエルとなる。
「いつ転」によれば、どんなポジションを選んだとしても、それを正解に変える強い力が必要だ。
何はともあれ、自らのポジショニングについて、戦略をもって思考せよということではないだろうか。
まとめ
自分の資質・個性を高めつつ、その価値を可能な限り高値で売るにはどんなポジションが良いかを考える。
これを実践できて初めて「転職力」があると言えるのだろう。
そして一番のポイントは、たとえ転職をしないとしても、「転職力」は我々労働者に自由をもたらすということだ。
付録