未踏の青

井の中の蛙、大海を夢見て

「U理論」×「クリエイティブ思考」(比較読書)

お題「比較読書」

問題意識

 これまでの比較読書で、労働市場を自由に渡り歩く「転職力」は、自分の資質を自覚し、その価値を可能な限り高値で売るにはどんなポジションが良いかを考えることで身につくものだとわかった。

d3c.hatenablog.com

 また、「資質」=「才能」とは、自分の好き嫌いであり、「再現性」や「共感性」を自覚して活かすだけでも十分だが、「創造性」に気づき、ストッパーを外すことができればなお良さそうだと理解した。

d3c.hatenablog.com

 それでは、どうしたら自分の「創造性」に気付けるだろうか。

 これまで記事で紹介した3冊に具体的な方法がなかったわけではないが、いまいち本質的な理解には至れなかった。特に、天野唯我氏のいう「天才」すなわち「創造性」を自分の内にも発見したいが、何かよい手法はないだろうかと探していた。  そこで出会ったのが以下の二冊。なお、「U理論」の原書・訳書は大変難解だという評判なのでマンガを読んでみたが、個人的には十分だった。

比較対象

 今回の比較対象は以下の2冊

比較の概要

U理論

 U理論とは、自分自身が問題の一部となっているルービックキューブ型の問題・ダイナミックな複雑性へのアプローチとして、過去の延長線上ではない変容を起こすための原理と実践手法。卓越したパフォーマンスを発揮している過程において発生している「意識の変容」 に着目。「ひらめき」や「直感」が再現可能となるように汎用化したものといえるか。

 U理論は通常3つ、または7つのステップで表されるが、自己変革の文脈で簡潔に整理すると次のようなステップに整理できるだろう。

  1. 従来の枠組みを保留とし、ひたすら観察する。
  2. 視座を転換し、場を感じ取る。
  3. エゴ、執着、恐れを手放し、場とつながる。
  4. 素早く試行錯誤を繰り返し、実践する。
10の習慣 

 クリエイティブ思考を発揮するには、自己の多面性を認め、そのまま受け入れることが必要であり、深いレベルの自己理解と自己表現が求められる。「FI」では、この自己理解と自己表現を深めるものとして10の習慣が紹介されている。

 自己理解と自己表現を一連の流れであると捉えると、クリエイティブ思考の発揮はU理論にも通じる。そうであるならば、この10の習慣は、U理論の中に位置づけることができそうだ。

  1. 観る:孤独、好奇心、瞑想、繊細
  2. 場を感じ取る:直感
  3. 場とつながる:夢想、異端
  4. 実践する:遊び、情熱、逆境

以下、詳述する。

観る

孤独

 U理論では、取り組む問題が個人のものであろうと、1対1の人間関係であろうと、チームや組織のものであろうと、自らの内から叡智を引き出そうとするアプローチだ。その過程が孤独でないはずはない。時間をかけて自分の内面を掘り下げるためには、孤独になれる場所が必要だ。

好奇心

 これまでと異なる考え方をするには、内外の丁寧な観察が必要になる。これを可能とする素質が好奇心だ。好奇心こそがプレゼンシングへ至る活力となりそうだ。

瞑想

 瞑想とは、一瞬一瞬の自己の観察である。雑念を振り払うことで内なる世界を探求し、更には場を感じ取り、果ては恐れを手放すこともできるかもしれない。

繊細

 傷つきやすいということは精神的な経験が多く、観察の対象の多様性、内面の豊かさにも資する。繊細さから生じるダメージを抑制できれば、その感受性の高さは鋭い洞察力となる。

場を感じ取る

直感

 従来の枠組みとは異なる視座から気付きを得ることは、まさに直感を得るということだろう。理性と分析に潰されることなく、無意識の直感が働いたとき、場を感じ取ることができそうだ。

場とつながる

夢想

 夢想とは「自分が何を考え、どう感じているのかを知るための、かけがえのないツールになる。」とされている。また、夢想は未来を創造するための第一歩でもある。

異端

 執着を手放すには勇気が必要だ。伝統や常識への挑戦となるとき、異端扱いされる可能性は高い。異端であることを苦にしない独立心があれば、手放すことも苦ではないかもしれない。

実践する

遊び

 実践において、常識的な考え方を脱却する場合、遊び心が発揮されている。それは好奇心や柔軟性の素でもある。

情熱

 もしもエゴを捨て、「叡智」を手に入れたのならば、その実現に熱中できるだろう。何かに魅了されているという状態は、プレゼンシングを経たという証でもあるかもしれない。

逆境

 トラウマは、ネガティブな思考や情緒の反芻を生み、苦難を乗り越えるための重要な経験となる。過去のパターンに囚われない新しい思考を実現しようとするとき、様々な抵抗がまさしく逆境そのものとなるだろう。トラウマから自己を再建した経験は、これを乗り越えるのに大いに役立つだろう。

まとめ

 造語や抽象的な説明で難解なU理論だが、様々な習慣からアプローチすることで、クリエイティブな「気づき」のプロセスがどういうものか、よりイメージしやすくなった。

 なお、「FI」は、クリエイティブ思考に10の習慣が全て必要だと言っているのではない。こうした習慣があるほど、クリエイティブ思考に馴染みやすいということだ。

 これまでの情熱、遊び、逆境といった経験の中に、自分の創造性が隠れているのかもしれない。また、自分自身に対して好奇心を持ちつつ、瞑想し、直感を信じ、夢想に耽ることで、自分の創造性の「気付き」を得たいものだ。

付録