未踏の青

井の中の蛙、大海を夢見て

PS4十三機兵防衛圏に関する雑感【ネタバレ注意】

物語を読み手に楽しんでもらうことの本質は、読み手の好奇心と上手に付き合うことにある。
核となる何らかの真実を少しずつ小出しにしていくことで、読み手に好奇心を持たせ、読み進めることで好奇心を満たす行為そのものを楽しませる、ということである。

 

単純に構成するならば時系列で直線的構成し、読み手には順番に紐解いてもらう。
わかりやすい例は推理小説。真犯人という真実について、手がかりを小出しにしていくことで、謎解きの過程や真犯人の意外性を楽しんでもらう。物語内の仕掛けだけでなく直接読者に問いかける手法として叙述トリックがある。

 

あるとき(「弟切草」?)、アドベンチャーゲームは二次元的構造に到達した。
ループやメタなど物語上の仕掛けによってフローチャート型、いわば二次元的に構成し、読み手には整理考察しながら紐解いてもらう。

物語の可能性として複数の真実(マルチエンディング)を提示するスタンダードなものにはじまり、直線的な真実を二次元的に見せたり(「Ever17」)、二次元的な真実を直線的に見せたり(「シュタインズ・ゲート」)もする。ストーリーテラーはなぜ物語が二次元構造なのかを物語上説明できる発明を求められた。

 

そして十三機兵防衛圏は三次元に到達した(気がする)。

 

以下ネタバレあり。

 

三次元構造

全要素100%にして整理すると(究明編で時系列に見ると)1つの群像劇。
しかし、「並行世界的な仮想現実」×「ループ」の二つの真実を活用し、主人公13人の視点×フローチャート型に再構成しつつ、多層型の物語構造を構築していく。

 

この見せ方が巧みだった。
ストーリーを読み進めていくと多層型の物語構造が浮かび上がってくるが、さらに紐解くと1つの時系列にまとまる。これが痛快だった。

 

見せ方

 

「ループ」または「並行世界」によって二次元に構成する作品はこれまでも発明されてきたが、「ループ」と「並行世界」の両方を使って三次元的に構成する作品は初めて見た。(ADVを残らずプレイしているわけではないので無知があればごめんなさい。)

二次元という複雑な構造を読み手にわかりやすく説明するのは中々難しい。
直線的に構成して見せた「シュタインズ・ゲート」はある種の到達点だ。
とても分かりやすいので友人へ布教もしやすかった。メディアミックスによる再構成もやりやすかっただろう。

今回の「十三機兵防衛圏」は次元を1つ上げた。結果、この物語の説明はとても難しい。真実は一本であり究明編をみれば非常にわかりやすいのだが、このゲームの面白さは物語の「真実」に直結するため、とても布教しにくい。アニメ化などのメディアミックスも難しいだろう。

しかし一度プレイヤーになってしまえばスムーズに進む。
各ストーリーの切り取り方と見せる順番が秀逸だからだと思う。
矛盾を起こさせず、ミスリードをちりばめながら、各ストーリーがゲームプレイの1サイクルに収められている。


ゲーム体験という観点から残課題

 

十三機兵防衛圏は究明編によって、「弟切草」から「シュタインズ・ゲート」までの二次元構造に関する発明の歴史を自己完結している。ここから先の発明は無からの創造になろう。

 

3次元構造が複雑で、見せる順番を維持するために仕方がないとも思えるが、プレイヤーの体験として管理されているような感覚を強く覚えた。


また、本質は群像劇なので3次元構造を紐解いても(微分しても)2次元。13人の主人公の視点の差は残るため、あのゲームの世界にはプレイヤーの居場所がないように感じ、どうしても没入感に劣る。ここからさらに1視点の直線に落とし込むことは可能だろうか……