未踏の青

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長期投資の新潮流となるか!?レバレッジ・バランスファンド①(基本概念の整理)

近年、レバレッジポートフォリオというアイディアが話題になっている。

 

個人投資家のアイディアとしてはこのあたり。

ROKOHOUSE式 可変レバレッジド・ポートフォリオ | ROKOHOUSE シーゲル流ロジカル投資術

 

また昨年から同様のアイディアを基本思想とする投資信託が登場した。

日興AM グローバル3倍3分法ファンド

大和証券 米国3倍4資産リスク分散ファンド

楽天証券 米国レバレッジバランス・ファンド(USA360)

アストマックス ウルトラバランス世界株式

 

レバレッジド・バランスファンドの基本的なアイディアは、株式とそれ以外の投資資産を組み合わせる分散投資によってリスク(標準偏差)を抑えつつも、レバレッジを賭けることによってリスク・リターンを3倍~3.6倍にし、株式100%では実現できないシャープレシオを目指すというものだ。

今回は、このアイディアのキーワードとなる、分散投資レバレッジについて整理してみる。


分散投資とは

投資対象の資産を複数持つことによって、リスクを下げ、効率(シャープレシオ)を上げていこうという投資戦略だ。
リターンは各資産の加重平均となるが、リスク(標準偏差)は各資産に相関があるため加重平均よりも下げることが出来る。よって単純にある資産を100%持つよりも効率的な投資が可能となる。

理論的には、ノーベル経済学賞に繋がる研究に基づいている。詳細は以下のキーワードで調べてみてほしい。

キーワード
ポートフォリオ理論
・有効フロンティア
・マーケットポートフォリオ
・資本市場線
CAPM(資本資産価格モデル)

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参照:https://equity-investment.info/word/word1/

 

結論としては、マーケットポートフォリオインデックス投資だけでよく、無リスク資産との配分によってリスクを調整しよう、ということになる。
本来、マーケットポートフォリオのバランスを長期間維持するための取引コストがかかるため、このコストをいかに下げるかということが肝心になるが、バンガード社のVTやVTIなどを代表にインデックスファンドの驚異的なコスト競争が発生しているところである。

もっとも、ベストとされるマーケットポートフォリオは、理論的には株だけではなく、人的資本や債券、不動産、コモディティなど、あらゆる資産クラスを含んだ概念であるが、各資産クラスの最適な割合を実際に計測することはできない。そのため株とそれ以外の投資割合をどうするかについては様々な見解があるところだ。

ただし、株式に限ったとしても、無リスク資産100%からインデックス投資100%のポートフォリオまでしか構築できない。債券などのローリターン・ローリスクの資産を含めていくと、リスクは抑えることができるが、リターンも落ちてしまう。
しかし、レバレッジをかければ有効フロンティアよりも上の座標を目指すことができ、リスクは抑えながら株式100%のポートフォリオよりもよりも高いリターンを狙うことが出来る。これがレバレッジド・バランスファンドの基本的な発想である。

 

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参照:https://www.nikkoam.com/sp/3bai3bunpo/01

レバレッジとは

 単純化していえば借金をして投資をすることである。
100万円の自己資金に追加して200万円を借り、計300万円を運用したとする。
もしリターンが10%であれば、単に100万を運用していたときの利益は10万円だが、
300万で運用しているので30万円の利益が出る。差額の20万がこの間の利息よりも低ければ、資金効率を高める事ができたというわけだ。

先物取引を活用する場合、決済を先送りにしているだけで資金を借りているわけではないため、金利コストが直接はかからないものの、先物の値段に織り込まれているとされる。また、長期で保有する場合は決済の期日に乗り換えをしなければならないため、保有のためのコスト(ロールオーバーコスト)がかかる。巷で話題のVXXショートなどは、構成商品であるVIX先物保有コストが高いため価格が下がり続けるということに着目したものだ。

もちろん、3倍10倍になるのはリターンだけではない。リスクも3倍10倍になる。

オーソドックスな説明としては、短期運用のための仕組みだとされている。しかし実は長期運用にも有用なのではないかという考え方もできる。

たとえば、経済評論家の山崎元氏は以下のように述べている。

山崎元が斬る!グローバル3倍3分法イベントレポート|日興アセットマネジメント

 

運用でレバレッジをかけることをどう考えるのかということについては、わたしは、金融資産額が小さく、人的資本が十分に大きい場合例えば「若くて健康で安定した職業に就いているが、貯金の少ない人」などがレバレッジを利用した運用を行なう事は、単に積立投資を行なうよりも合理的な場合が十分あり得ると思っています。

積立でずっとエクスポージャー(マーケットに投資した状態)を増やしてくような状態を考えると、投資額が積み上がった最後の方で起きたそのリターンの変動の影響をものすごく大きく受けます。一方、積み上がりが少ない前半にレバレッジをかけ、将来に向けてレバレッジを落としていくような運用をすれば、リスク資産の額が時間に対して均されます。それぞれの時点のリターンの違いの影響がより良く分散されると期待でき、おそらくリスクとリターンの特性は良くなるだろうと思います。だからって「皆さんレバレッジかけましょう」ということではないんですけど。運用の本などを書くわたしの立場からすれば、本当は借金してまで投資しない方がいいですよという風に言っておくほうが安全なんですけどね(笑)。

すなわち、レバレッジによって積立投資の時間分散の効果を上げることができるのではないか、ということだ。年功序列で終身雇用、徐々に上がっていく給料から積立で貯蓄を行うというのは典型的な日本人像のように思える。

また、長期投資の狙いは複利効果にあるのだから、初期の投資金額をできるだけ大きくすることは理にかなっているように思われる。


レバレッジド・バランスファンドのポイント

これまでの説明で見たとおり、レバレッジド・バランスファンドとは、効率的な分散投資を行いながらも、レバレッジをかけることで数倍のリスク・リターンを狙い、資金効率を上げることを狙いとした投資信託である。

有効フロンティアよりも外のシャープレシオとリターンの組合せが売りだろう。

もしこれを購入する場合、特に株式のインデックス投資と比較した場合には、次の3点が条件となるか。

  • 投資スタイルとしてリターンの大きさよりもリスクの圧縮を重視していること
  • インデックス投資よりも高いシャープレシオであること
  • 許容できるリスクに収まっていること

仮にリターンを重視するのであれば、SPLXなどのように株式のインデックスにレバレッジをかけた商品へ投資すればよい。

これが満たされるかどうかは、

  • 構成する資産の分散とリバランスが適切か
  • レバレッジ先物取引のコストによるリターンの低下が許容範囲か

を見ていく必要がありそうだ。

まず、分散投資の理論的前提となる各資産クラスの相関関係は長期的にチェックする必要がある。

そして、レバレッジコストと先物取引のコストが高ければ実質的なリターンが減るため、期待するシャープレシオが維持されているかチェックする必要がある。

また、注意すべきリスクとして以下の2つを挙げておきたい。

先のURLのイベントレポートでも説明されているが、現状のロールオーバーコストは大したコストではないものの、それは現在の先物市場の流動性が高いからである。よって購入商品が参入している先物市場の流動性を気にしておく必要がありそうだ。

そして金利の上昇も気がかりだ。現在は世界的に低金利と言われており、日本やドイツはマイナスだ。金利上昇する余地は十分にある。金利が上昇すると、まず市場資本線の傾きが下がる。これに併せて接点ポートフォリオにリバランスすれば、重視しているシャープレシオが下がる。他方、リバランスが行われなければ、有効フロンティア(たとえば株100%)を下回るということもありうるか。

なお各資産クラスの同時安というシナリオが最悪のケースであると思われるが、そもそもそんな状況では無リスク資産しか選択肢がなく、投資対象の選び方よりもリスク管理の問題と位置付けた方がよいのではないか。