未踏の青

井の中の蛙、大海を夢見て

楽天USA360を購入~その投資判断とは~

 

余剰資金をどう運用しようか、しばらく検討していたが、楽天・米国レバレッジバランス・ファンド(USA360)の購入に充てた。その判断に至った経緯をメモとして残しておく。

www.rakuten-toushin.co.jp

 

なぜ分散投資なのか

 

 楽天USAはレバレッジをかけながら株1:債券3の割合で投資するETFだ。

その構成資産の90%は全米株ETFであるバンガード・トータル・ストック・マーケット(VTI)である。経費率わずか0.03%のVTIはもちろん、S&P500に連動するVOO、全世界に投資するVTなど、株に100%投資するという方法が比較対象になり得る。

また、レバレッジをかけるならばSPXLという、S&P500をレバレッジ3倍とするETFもあり、リターンを狙うならばこちらも有力候補だ。

しかしリターンを抑えてでも分散投資をすることにした。その目的は主に2つある。

リスクの圧縮

 

 投資における運用リスクとは値動きの標準偏差である。

たとえば米国株に30年投資すると、円換算でリターン8.4%、リスク22.4%とのことだが、これは年率のリターンが約70%の確率で8.4% ± 22.4%におさまる、ということを意味する。

複数の資産に分散投資する場合、リターンは加重平均であるが、リスク(標準偏差)は各資産が無相関又は逆相関がある場合、単なる加重平均よりも小さくなる。すなわち期待するリターンのばらつきを抑えることができる。

リスクを抑えるということは期待リターンから乖離を抑えるということであり、資産形成の計画の精度を上げるということである。今回はレバレッジをかけるということもあり、投資計画が大きくずれることのないよう分散投資を選択した。

リバランスによるパフォーマンス改善の可能性

 

 

分散投資であってもリバランスをしないという選択肢もあるが、定期的または一定の乖離でリバランスをするのが一般的だろう。

無相関または逆相関の複数の資産に、固定の金額割合で分散投資をすると決め、一定期間ごとにリバランスをすると仮定する。そうすると、値下がりしたものは買い足し、値上がりしたものは売り減らすということになるので、逆張りのような効果が生まれる。よって、相場の動きによっては1つに100%投資するよりもパフォーマンスが改善することがあり得る。

もっとも、このパフォーマンス改善こそ、前述の分散投資によるリスク圧縮の一局面であって、同じことについて別の言い方をしただけのようにも思える。

 

なぜレバレッジなのか

 

楽天USA360は、資金10%について27倍のレバレッジをかけて米国債取引を行うため、資金90%の米国株と合わせて3.6倍分のレバレッジをかけた運用を行うことになる。

レバレッジとは単純化すると借金をして資金運用をすることであるから、金利コストと引き換えに、資金効率を高めることになる。

時間の圧縮

 

借金をして何か事業をするというのは企業では一般的なことである。

個人としても、基本的には短期運用のための手法と整理されているものの、長期運用においても有用な場面がありうる。住宅ローンもいわばレバレッジの資産運用であり、リターンが金利コストを下回るならばありだ。

年利8%の運用でレバレッジをかけずに資金を2倍にするには9年かかるが、2倍のレバレッジなら最初から2倍の資金運用ができる。いわば9年を短縮したことになるのではないか。

 本当の意味での時間分散

 

時間分散というとドル・コスト平均法が連想されるが、これは市場がもみ合いでなければ有利ではない。インデックス投資にとっては、基本的に市場がランダムであるという前提に立つので、ドル・コスト平均法は決して論理的結論ではない。人口拡大によって市場全体が成長するのは間違いないと見るならば、初めから全額投資した方が良い。

本来、時間分散とは、長期投資によって1年当たりの価格変動のブレが小さくなる効果を期待することである。すなわち、平均リターン・リスク(標準偏差)に近づけるという事である。リスク(1年あたりの価格変動)を抑えるならば、投資期間の初期と終期とで運用金額を近づける必要がある。

ところで、私はNISAもiDecoなど、積み立てを行っている。これは、ドル・コスト平均法の実践ではなく、投資に回せる資金が収入とストックの上昇により徐々に増えているということの反映に過ぎない。幸いなことに安定的で年功序列な勤め先であるため、引き続き、運用資金は徐々に増えていくと期待している。

このようなライフプランの場合、運用終期である定年間近のリスクに比べて、現在のリスクが小さすぎるきらいがある。真の長期分散を目指すならば、合計運用資金は長期で近づけておきたい。つまり、定年まで残念数のある、長期投資の初期のうちは、レバレッジをかけてリスクを負うことに意味があるのだ。

 

なぜ楽天USA360なのか

 

 「分散投資」×「レバレッジ」を基本アイディアとする投資信託は、日興AMのグローバル3倍3分法ファンドを皮切りに、私が確認できた限りでは4つの商品がある。その中でも、費用の面からグロ3と楽天USA360のどちらにしようか最後まで悩んでいた。最終的に楽天USA360を選んだ理由はシンプルさである。

理解しやすい

 

VTIはシンプルだ。米国株と米国債の身に投資する。実際のレバレッジ米国債のみだ。

対して他のファンドは各国株、各国債券、金、REITなどもバリエーションに富む。何にレバレッジをかけるかでも変わってくる。

資産を分散させた方がリスクを圧縮できるかもしれない。実際そのためにバランスファンドを購入している。レバレッジ金利コストも分散できるかもしれない。

しかし、理解できない投資は博打と変わらない。分散効果は資産間の逆相関が条件だ。米国株と米国債券との逆相関は理解できるし、実際にチェックもできる。しかし、地域や資産クラスが増えてくると個人の手には負えなくなってくる。

他のファンドはその複雑さに比べて個人が理解するだけの説明が不足していると感じた。グロ3で言えば、日本株式と各国債券にそれぞれどれくらいのレバレッジをかけているかがわからない。販売説明に逆相関のデータはあるが、マンスリーレポート等で今後も逆相関に関する報告があるかもわからない。

なお楽天USA360の説明が豊富だというわけではない。自分で容易に調べられる程度にシンプルなのだ。

レバレッジとリスクをコントロールしやすい

 

前述のとおり、レバレッジをかける理由は、時間短縮効果を期待するだけでなく、長期投資のリスクを均すことが目的である。

そうすると、投資終盤にはレバレッジをさげ、リスクを下げていくことが望ましい。

そこで楽天USA360のシンプルさが活きる。VTIや米国債ETFに資金を回すことでレバレッジや株・債券比率のコントロールができるからだ。

例えば、楽天USA360に100万円分を投資している状態で、VTIを180万円分購入すれば、VTIを270万円、米国債270万円保有し、レバレッジは約2倍かけているのと同じことになる。

長期投資でインデックス投資をするのは何が起こらないからであり、レバレッジをかけるのは自身の生涯人的資本の価値を見越してのことだが、人的資産にも何が起こるかはわからない。

すなわち、長期的にリスク許容度が変わってくる可能性に対応できることがファンドの条件となってくる。レバレッジをかけるか否かだけではなく、何倍にするかを調整できた方が柔軟性に富むだろう。

 

なお、楽天USA360はあまりにシンプルなので自己再現もできそうである。27倍の米国債ETFは見つからないが、S&P500連動3倍のSPXLと米国債3倍のTMFを1対3で購入すれば、同じようなアセットのレバレッジ3倍ポートフォリオは構築可能だ。

しかし、個人でこれを再現するにはリバランスのための取引コストがかかる。残念ながら現状の取引環境では取引コストがかさむため割に合わない。しかもSPXLとTMFの経費率は1%前後。楽天USA360の経費率0.5%弱はかなりリーズナブルだ。

 

今後の管理

以上の検討から、楽天USA360を購入した。しかし、ほったからしというわけにはいかない。他のETF以上に要経過観察だ。

金利コストと、米国株・債券間の逆相関は引き続きチェックしく必要があるだろう。