未踏の青

井の中の蛙、大海を夢見て

DMM証券の米国株手数料0ドルは本当に安いのか

国内証券会社の手数料値下げ競争が激化している。特にアツいのは米国株取引だ。

昨年まではどの証券会社でも米国株の最低取引手数料が5ドル程度であった。
2019年7月にマネックス証券が米国株の最低取引手数料0.01ドルとしたことを皮切りに、
楽天証券SBI証券が値下げに追随し、今や三者の最低取引手数料は0ドルだ。

そしてついに、12月9日からDMM.com証券が米国株取引手数料の完全無料化に踏み切った。
先の大手三社の「最低手数料」とは大きく異なる。
三社はいずれも0.45%の手数料、最大20ドルまでかかるところ、DMMの場合は完全に0ドルだ。

取引手数料だけに注目するとDMM証券が圧倒的にコストパフォーマンスに勝るように見える。
ただし注意が必要なのは、米国株取引には取引手数料以外にもコストがかかるということだ。

為替手数料である。


DMM証券での取引例

DMM証券には円貨建決済しかない。よってDMMの株の売買や配当の受け取りに、DMMが設定する為替手数料が必ずかかることになる。

DMM証券の為替手数料は1ドル25銭。さらに配当受取の為替スプレッドが1円。

つまり、売買時には1ドルあたり0.25円、配当受取時には1ドルあたり1.25円のコストがかかることになる。

例えばある銘柄を1万ドル分購入し、1年ホールドし、売却する。その間に3%の配当を4回受け取ることができたとする。計算を簡単にするため株価の変動はなかったものと仮定する。

この場合の為替コストは、6500円(1万ドル×0.25×2+1万ドル×3%×1.25×4)となる。

 

SBI証券での取引例

大手三社の為替手数料も1ドルあたり25銭である。よって円建の場合はDMMと為替コストは変わらず、

しかし大手三社は外貨建での購入が可能なので、より安い為替コストで外貨を調達することが可能である。

例えばSBI証券の場合、次の2つの手段が可能だ。

  1. SBI銀行でドルを売買する(1ドル4銭。SBI証券への振替手数料なし)
  2. SBI証券のFX口座でドルを売買する(1ドル0.2銭。ただし1万ドル単位)

DMMの具体例と同じような取引をSBI証券で行う場合、1万ドル分の購入と売却で合計40ドル(最大手数料20ドル×2)の取引手数料がかかる。

しかし為替コストはSBI銀行でドルを売買する場合、848円(1万ドル×0.04×2+1万ドル×3%×0.04×4)で済む。1ドル110円とすると、合計コストは5248円だ。

FXを利用する場合の為替コストは88円で済む(売買の1万ドルのみFX)。

今回はコストに着目しているので詳細には立ち入らないが、外貨建決済の場合、余剰資金を外貨建MMFに入れておくなどの応用も効く。

DMM証券の活用方法

こう書くとDMM証券が高いように思われるかもしれないが、上記の例はDMM証券に不利な投資スタイルであった。

DMM証券が割安になるのは、大手三社の取引コストが為替コストを上回る場合である。上記の例では、1万ドルの売買1回ずつ行った場合は大手三社が安いが、5000ドル2回にわけて購入し一括売却する場合はDMM証券の方が安くなる。

目安としては、配当を無視すると、約1万ドル以上の取引を繰り返すという場合でもない限り、DMM証券の方が安い。

 

1万ドル単位でしか売買をしないという投資は多くの個人投資家にとってあまり現実的ではないだろう。

少なくとも私のような余剰資金を少しずつ投資に回している個人にとって、日本国内で米国株に投資するならばDMM証券一択となる。

他の証券会社もいずれコストを下げてくるという期待はアリかもしれない。実際、大手三社はいくつかの米国ETFについて来年から買付手数料の無料化に踏み切るようである。マネックス証券では一時的なものではあるが米ドル為替手数料無料キャンペーンや取引手数料キャッシュバックキャンペーンを行っている。